The Kamakura Print Collection, Photogravure Etchings by Peter Miller

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About the Artist – Peter Miller

ミラー・ピーターピーター・ミラー氏は1991年、鎌倉に、フォートグラヴィエールという銅版画の技法を使った版画製作に専心するため、工房、“鎌倉版画コレクション”を構えた。彼の作品製作の基本は、19世紀にヨーロッパで発明された写真技法と現代の日本の印刷技法と、さらにそれに墨絵様式を取り入れて日本の海、山、寺院仏閣、庭園をいかに表現するかにあった。彼は始めの頃はアメリカの写真技法家ピーター・ヘンリー・エマーソンの影響を受けたが、その後写真技法の草分け的存在であるであるF.タルボットとニエプセのフォートグラヴエール技法を研究し、現代に再現させその技術を版画製作に取り入れていった。

同氏は1992年来これまで、日本は東京、横浜、鎌倉。大阪、アメリカは首都ワシントン、シアトル,ヨーロッパはドイツ ケルン、イギリス ロンドンなど10回もの個展を開催してきている。彼の作品はまた、ワシントンのスミソニアン館のひとつでアジアを代表する美術作品のみ集めたサックラー・ギャラリーに、例外的にアメリカ人アーテストとしては初めて、彼のアジアの風物を写した作品が永久収蔵された。そのほか県立鎌倉近代美術館、アメリカ国立美術館、フランス美術館など多く世界各地の美術館にも彼の作品は所蔵されている。

同氏は1945年ペンシルバニア州はフィラデルフィアに生まれ、同州ピッツバーグで幼年期を過ごした。彼の言によれば、彼の育った町はアパラチャ山脈の北に位置し冬は長くしかも雪が多い季節、金屑の堆積とその噴煙が立ち昇る鉄鋼の町であった。多くの橋、ドーム型の屋根の教会があり、路面電車が走り、そして丘陵と渓谷の多いところで、そこには勤勉で夢に溢れた人達が多く移り住んだ町であった,と言う。その後彼はコロンビア大学、カリフォルニア大学のバークレイ校を卒業し、1981年からの日本でのいくつかのビジネス経験を経たのち、生涯の地として当地鎌倉に居をかまえることとなった。


ビデオ:鎌倉ケーブルテレビ「湘南流〜ピーター・ミラー銅版画家

Pittsburgh, Pennsylvania

Peter Miller / ピーター・ミラー氏は
1991年、鎌倉に、フォートグラヴュールという銅版画の技法を使った版画製作に専心するため、工房、“鎌倉版画コレクション”を構えた。彼の作品製作の基本は、19世紀にヨーロッパで発明された写真技法と現代の日本の印刷技法と、さらにそれに墨絵様式を取り入れて日本の院仏閣、庭園をいかに表現するかにあった。彼は始めの頃はアメリカの写真技法家ピーター・ヘンリー・エマーソンの影響を受けたが、その後写真技法の草分け的存在であるであるタルボットとニエプセのフォートグラヴュール技法を研究し、現代に再現させその技術を版画製作に取り入れていった。1992年以来まで、日本は東京、横浜、鎌倉。大阪、アメリカは首都ワシントン、シアトル,ヨーロッパはドイツ ケルン、イギリス ロンドンなど10回もの個展を開催してきている。彼の作品はまた、ワシントンのスミソニアン館のひとつでアジアを代表する美術作品のみ集めたサックラー・ギャラリーに、例外的にアメリカ人アーテストとしては初めて、彼のアジアの風物を写した作品が永久収蔵された。そのほか県立鎌倉近代美術館、アメリカ国立美術館、フランス美術館など多く世界各地の美術館にも彼の作品は所蔵されている。1945年ペンシルバニア州・フィラデルフィアに生まれ、同州ピッツバーグで幼年期を過ごした。彼の言によれば、彼の育った町はアパラチャ山脈の北に位置し冬は長くしかも雪が多い季節、金屑の堆積とその噴煙が立ち昇る鉄鋼の町であった。多くの橋、ドーム型の屋根の教会があり、路面電車が走り、そして丘陵と渓谷の多いところで、そこには勤勉で夢に溢れた人達が多く移り住んだ町であった,と言う。その後彼はコロンビア大学、カリフォルニア大学のバークレイ校を卒業し、1981年からの日本でのいくつかのビジネス経験を経たのち、生涯の地として当地鎌倉に居をかまえることとなった。

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Interview

「フォトグラビュール」という銅版画の技法をご存知だ ろうか?

浄明寺在住のピーター・ミラーさんは、世界
でも数少ないフォトグラビュール銅版画家で、その作品 はアメリカのスミソニアン博物館やフランスの美術館、 神奈川県立近代美術館にも収蔵されている。アメリカで 生まれ、三〇年ほど前から日本に住むピーターさんに、 鎌倉との出会いや創作についてお話を伺った。 (編集部)

陰翳礼讃を作るフォトグラビュ ール

伊藤
ピーターさんの作品をホームページで拝見しましたが、鎌倉のお寺などを中心に古き良き日本を 題材にされていますね。日本の文学作品も創作のヒ ントになりますか?

ピーター: 鎌倉の作家ということもあって、大佛次郎さんの作品はよく読みます。自転車で時々、雪ノ 下
の大佛さんの家の前を通るんです。

伊藤:  作品もさることながら、大佛邸のあの路地と 黒板塀は雰囲気がありますね。

ピーター: そうですね。去年は谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に触発された個展を開きました。谷崎さんの『陰翳礼讃』は家の中のことが中心ですが、私は外 の世界の光と影をテーマにしました。西洋で「暗い」というのは「わかりにくい」と捉えられること が多いので、そこに敢えて挑戦しました。

伊藤:  ヨーロッパでは今、むしろ間接照明が多い。 日本は電灯の登場により〝部屋は明るく〟が当り前 となりました。ろうそくや行灯の照明で生活してい た『陰翳礼讃』の時代と、隅々まで照らすような今 の照明の生活は、谷崎が論じた美の感覚とは全く別 物です。今の若い世代に『陰翳礼讃』は、難しい作 品かもしれません。

ピーター: その意見はよく分かります。 『陰翳礼讃』 は昭和八年。まだ電灯が少なかった時代の作品です ね。私がやっているフォトグラビュールという銅版 画の技法は、さまざまなトーンの「暗さ」が出せる ので、『陰翳礼讃』の世界を表現するにはぴったり な方法なんです。現在の私達の生活は、あまりにも 色が多すぎるような気がします。色の数は多いの に、それぞれの色の濃淡の違いにはあまり気がつかない。

伊藤: 周囲の住まいを見渡しても、和風建築はほと んどありません。浴室や厠にいたっては、谷崎が礼 讃した陰翳は現代では不便なものとなるでしょう。 フォトグラビュールという手法は、版画のメゾチン トのように撮った写真を加工するのですか?

ピーター: そうですね、メゾチントに少し似ていま す。簡単に言うと、ポジフィルムに紫外線を当て、 カーボンペーパーに写し取り、さらにそれをゼラチ ンで銅板に写し込みます。その銅板を腐蝕液に入れ て凹凸を生み、元となる版を作るんです。銅の凹版 による写真印刷技術 で、インクの盛り具合 でさまざまな色の階調 を豊かなトーンで再現 できます。

伊藤: 普通の写真や版 画よりも数倍、手がか かりそうですね。フォ トグラビュールという技法には、どのようにして出会ったのでしょう。

ピーター: 一九八九年、ニューヨークのメトロポリ タン美術館で、写真技術の先駆者タルボットとニセ フォール・ニエプスのフォトグラビュールを見て、 自分でもこのような作品を作りたいと思ったのが きっかけです。

伊藤: タルボットは、世界最古の写真集を出した写
真家として知られています。フォトグラビュールは 一九世紀の写真技法だそうですが、ピーターさんは 古い技法をそのまま再現しているのでしょうか。

ピーター: フォトグラビュールは、ヨーロッパで一八二〇年代に発明されました。しかし二〇世紀に入りほとんど忘れられていましたから、オリジナルの 技法に現代の印刷技法と墨絵の様式を取り入れ、自分なりのものにアレンジしています。

伊藤: ピーターさんの作品から作家のモチーフへの 好奇心と憧憬を感じて、ドイツ・ルネサンス期の版 画家アルブレヒト・デューラーが思い浮かびまし た。デューラーはというと「騎士と死神と悪魔」 の傑作に目がいきますが、蟹の作品も素晴らしいと 言われます。でも生まれたのはドイツの内陸の ニュールンベルグですから、デューラーがイタリア のナポリで初めて蟹を見たのは結婚の翌年です。そ の蟹の絵は生物学者が驚くほど正確なものです。そ こには長年の蟹への思いがあったと思いますね。

ピーター: その意見、よく分かります。

アメリカから鎌倉へ

伊藤: お生まれはアメリカですよね。どのような経 緯で日本に来られたのでしょう。

ピーター: コロンビア大学とカリフォルニア大学を 卒業して、経営コンサルタントの仕事をしていまし た。七〇年代後半、ホンダがアメリカへ進出する際 にお手伝いしたのが、日本との出会いです。そして 日本のことをもっと知りたいと思い来日し、東京の オフィスにいた妻と知り合いました。

伊藤: その頃はまだ、銅版画の仕事はしていなかったのですか?

ピーター: この仕事は、日本に住まなければできま せんでした。若くてもできなかったでしょう。ちょ うど二〇年前の四五歳から始めたんです。一九九一 年にこの工房(鎌倉版画コレクション)を構えて、 フォトグラビュールの作品作りに専念しました。

伊藤: 第一線で活躍する経営コンサルタントから銅版画家とは、随分な転身ぶりですね(笑) 。

ピーター: フォトグラビュールはあまりに手間がか かるので、仕事の傍らにやることはできません。一 カ月に一作品ぐらいしか作れないんです。自然の中 でじっくり制作をしたいと、いろいろと探してやっ と鎌倉にたどり着きました。環境・文化・歴史が鎌 倉のユニークさです。最近では鎌倉世界遺産登録推 進協議会にも参加して、 「外国人の目から見た鎌倉」 という視点で意見も言わせていただいています。

伊藤: 海外でも随分と仕事をされていますね。昨年 末はフィンランドでも個展をされたとか。

ピーター: 来年の秋にはフランスで個展を開く予定です。初めての個展は鎌倉で一九九二年に開きましたが、 オープン初日から人が並び、自分でも驚くほどの反 響でした(笑) 。それから日本国内はもちろんアメ リカ、ドイツ、イギリス、ロシアと世界中で展覧会 を開いています。アメリカのスミソニアン博物館 に、アメリカ人として初めてアジアの風景作品が収 蔵されています。他にフランスの美術館、また鎌倉の県立近代美術館にも作品が納められています。

過去と未来を考える作品作り

伊藤: 作品の多くはモノクロですね。谷崎の論では ないですが、暗さの中にも 様々な飽きることのない深 みと濃淡があります。

ピーター: 作品の四分の三ぐらいがモノクロです。例 外として鶴岡八幡宮の大イ チョウの作品だけはカラーで作っていたんですが、大イチョウが倒れて以来、駅前の書店では僕のポストカードが随分と売れたようです(笑)。

伊藤: 微妙なインクの調整 が必要でしょうから、刷るにも細かな神経がいるのでしょうね。紙も和紙や海外のものなどを使われているようですが、一作品につき何枚ぐらい刷るのでしょう。

ピーター: 一枚につき四〇~五〇枚ぐらい刷りますね。一般の方は一番初めに刷ったものを欲しがるようですが、私としては一〇枚ぐらい刷ってからのほうが、どうプレスすればいいかがわかるので、いいものができるように思います。

伊藤: 本来、版画は彫師と刷り 師というように分業制です。かつて「かまくら春秋」の表紙を 飾っていただいた斉藤清さんには、大津一幸さんという素晴ら しい刷り師がいらした。後に大 津さんの作品も 「かまくら春秋」 の表紙になりましたが。ピー ターさんはすべてを一人でやら れているのですか。

ピーター: はい。鎌倉には日本版画界を代表する刷り師の木村喜八さんがいらっ しゃいます。基本的には自分でやりますから、すごく時像では、本来の自然よりも明るく色が出てしまう。 私自身は抽象とリアリティの中間が好きなので、今現在だけでなく、過去と未来を同時に考えるような 作品を作りたいですね。人の 「思い出」や「夢」を表現した いです。

伊藤: まずはモチーフを探し出 して良い写真を撮り、そこから 何段階も手間をかけなくてはい けない。かなりの根気も必要で す。若い頃にはできない、と おっしゃっていた理由がわかり ました(笑) 。

ピーター: 作品の中に情報だけでなく、もっと深い気持ちを盛 り込みたいのです。そうすると 自然と外の世界の見方も変わると思います。

伊藤: これからも日本の文化の素晴らしさを、世界 に向けて発信していって下さい。

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