鎌倉プリント・コレクションへようこそ ・ フォトグラビュール 銅版画、ミラー・ピーター (Peter Miller)


ビデオ:鎌倉テレビ放送「湘南流〜ピーター・ミラー銅版画家

技法 (ペジ3) ・ ミラー・ピーター

さらに、透明あるいは不透明にするための材料を加えます。銅版画用インクは新鮮なものがよいので、私は、刷りの度に、必要なだけのインクを混ぜ合わせます。インクは図6のようにナイフから少しずつ垂れ落ちなければならず、決して流れ落ちるようであってはいけません。インクがこのような状態であって初めて、鮮明かつ明瞭な刷りを可能にするなめらかな拭きが可能となります。私は、それぞれのイメージに合わせて、さまざまな粘度の黒インク、また黒とセピア、バーント・アンバー、またはブルーを混ぜたものを使います。刷りを始めるとき、私は普通さまざまなインクと紙を試し、そのイメージにあったインクと紙の組み合わせを探します。インクの着き具合、どのくらいインクを吸収するか、トーン、表面の質感など、銅版画用の紙には、様々なものがあります(図8)。

Etching papers

 

図8版画用紙と和紙

銅版画用の紙には、強い圧に耐える強さが必要であり、同時に細かいニュアンスを刷り取れる繊細さが必要となります。私は堅めであまりインクを吸い込まない紙を、砂や雪などの比較的明るいイメージに使います。深く腐蝕された版は、よりインクの吸い込みの良い紙や和紙に刷ったときに良い結果を生みます。大変薄い和紙を、厚めの紙に貼り込むことで繊細な刷り効果を得ることが出来ます。インクは薄い紙を突き抜け、また部分的に下の紙の色が作品に生かされます。腐蝕されていない島状の部分やイメージのハイライトの部分からインクを拭き取るのは見たところ単純な作業に見えますが、実際は作品の数だけインクの拭き方が存在します。一般に拭き方は、蚊帳のような寒冷紗と呼ばれる布で、インクを版の溝の部分に詰め込んでゆき、徐々に拭く圧力を弱めながら拭き取ります。そして、イメージの暗い部分にインクは多く残り、明るい部分に残るインクは少なくなります。どうしても、ひと拭きひと拭きインクが、暗い部分から拭きだされ、明るい部分に移っていきます。このことで、油膜が版に残りハイライトにトーンが乗ったり、細部のコントラストが落ちたりします。イメージの明るい部分から暗い部分へ拭き進んでいけばコントラストが高かくなります。

銅版画用プレス(図9)は、2本のローラーの間にベットプレートがはさまった形になっており、ローラーの圧力を調節して、版から紙にインクを刷りとるのに充分な圧を与えます。

Press 図9エッチングプレス

私は普通、一度にエディション(限定部数)全部を刷ることはせずに、1回の刷りで、5枚から10枚位刷ります。刷り上がった作品1枚1枚に付ける日付は、刷った日ではなく、版を腐蝕した日とします。作品が刷り上がったら、私は、インクの盛り上がりをつぶさないために、押しなどせず、少なくとも1週間から10日間自然乾燥します。わたしは、しばしば、いくつかの版を同時に進めますが、1点の作品の全部の工程を終えるのに約一月を費やします。

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