The Kamakura Print Collection, Photogravure Etchings by Peter Miller

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About a Ginkgo’s Fall

朝日新聞2010年05月12日

鎌倉市の鶴岡八幡宮の大イチョウが倒れて以降、多くの人がかつての雄姿を絵はがきに求め、買っていった。古都のシンボルを失った喪失感は、絵はがき の作者自身にとっても一層深い。独自の写真銅版画を制作する米国人作家、ピーター・ミラーさん(64)=同市浄明寺4丁目=が20年間に手がけた300作 品のうち、大イチョウは唯一のカラー作品でもある。

(山元一郎)

ミラーさんは米国フィラデルフィア生まれ、コロンビア大卒。大イチョウとの出会いは、米国で結婚したばかりの妻裕子さん(60)と 1978年正月に八幡宮を訪れた時だった。「一番目立ったのが大きなイチョウの木でした」。そのときは「ずっと鎌倉の歴史を見守ってきたのだ」と感嘆し た。

ミラーさんは米国、東京で経営コンサルタントの仕事をしてきた。91年、独学した銅版画による写真作品の工房をつくり、鎌倉に移り住ん だ。

黄葉した大イチョウにひかれ、初のカラー制作に挑んだのが95年の晩秋。大判カメラをバックパックに入れ、自転車で出かけた。一番いい 色に撮るために10回は通った。

さらに工房での作業へ。色分解、化学反応処理などを経て三つの銅版を作る。銅版にインクをのせ、1枚ずつ同じ位置に0・1ミリの誤差も なく置き、紙に重ね刷りをする。

大イチョウの色は「ゴールデン」とミラーさんが表現するような奥深い色合いになるよう何度も試み、満足できる刷り上がりまでに1年以上 もかかった。作品は縦26センチ、横21センチ。この作品を写真に撮って作った絵はがきは、市内の書店で売られ、倒壊後は飛ぶように売れたという。

この20年で、鎌倉大仏をはじめ社寺や 自然を中心にした作品約300点を制作してきた。「見る人の想像力のスペースを広げるため」にモ ノクロームに こだわってきた。色分解したカラー作品は今も大イチョウだけだ。

大イチョウが倒れたのが3月10日。ミラーさんは旅行中で、市内の自宅に戻って同13日に倒壊を知った。驚きとともに「信じたくない」 という気持ちが駆けめぐった。ようやく翌14日になって、自宅から約2キロ離れた八幡宮へ。「目の前で本当に倒れていて、寂しさを感じました」

今も頭から大イチョウのことが離れない。「人間は失ってから分かるんですね。倒れて多くの人が訪れているのも、大イチョウに重ねて自分 の人生や家族のこと、友人のこと、仕事でのつながりに思い至るから」と話す。

ミラーさんの 工房は「鎌倉プリント・コレクション」:   http://kamprint.com/xpress/

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